最近、自由な働き方として注目を集めるフリーランスですが、その一方で一度フリーランスになったものの、再び正社員の道を選ぶ人が増えているという話を聞いたことはありませんか？「仕事が取れないから？」と思うかもしれませんが、理由はそれだけではありません。今回は、正社員とフリーランスのメリット・デメリットを比較しつつ、AIの台頭など、変化の激しい現代社会で私たちがどのようにキャリアを築いていくべきか、そのヒントを探っていきます。
安定の正社員か、自由なフリーランスか？それぞれの実態
まず、両者の最も大きな違いは「安定性」と「自由度」です。正社員の最大の魅力は、毎月決まった給料が保証される安定性。多少の遅刻や病欠があっても給与は保障され、会社が保険料の半分を負担してくれる厚生年金などの手厚い社会保障も受けられます。一方、フリーランスは働いた分だけ収入に繋がるため、実力次第で高収入を目指せますが、収入は不安定になりがちです。社会保障も国民年金が基本となり、雇用保険もないため、セーフティネットは正社員に比べて弱いと言えるでしょう。しかし、フリーランスには「時間や場所の自由」という大きなメリットがあります。休みたい時に休み、好きな場所で仕事をする。そんなライフスタイルを実現できるのは、フリーランスならではの魅力です。かつては、この「自由」に惹かれてフリーランスを選ぶ若者が急増しました。
AIの台頭と「信用」の壁-フリーランスを取り巻く環境の変化
では、なぜ今になって正社員に戻る人が増えているのでしょうか。その背景には、AI技術の急速な発達があります。これまでフリーのライターやエンジニアが担っていた仕事の一部が、AIに代替されるようになったのです。例えば、簡単なブログ記事の作成やプログラミングのコーディング作業はAIが得意とするところ。これにより、フリーランスの仕事が減少し、単価も下落傾向にあります。結果として、以前のように稼ぐことが難しくなり、安定を求めて正社員に戻るという選択をする人が増えているのです。また、フリーランスとして生き抜くためには、スキル以上に「信用」が不可欠です。特に社会人経験のないまま独立すると、この「信用」を得るのに苦労します。私自身も、過去にフリーランスとして働いていた際、リーマンショックで真っ先に契約を切られた経験から、信用の大切さと安定のありがたみを痛感しました。まずは会社組織の中で、ビジネスマナーやお客様との向き合い方といった「商売の基本」を学び、信用を築くことが、将来の独立への確かな礎となるでしょう。
これからの時代を生き抜くためのキャリア戦略
結論として、正社員とフリーランスのどちらが正解ということはありません。大切なのは、終身雇用が当たり前ではなくなったこの時代に、「会社がなくなっても、自分一人の力で食べていけるスキルを身につけておく」ことです。そのための戦略として、まずは正社員として働きながら、ビジネスの基礎と専門スキルを徹底的に学ぶことをお勧めします。そして、経験を積んだ上で、副業としてフリーランスの仕事を始めてみるのも良いでしょう。正社員としての安定収入を確保しつつ、個人のスキルで稼ぐ力を養う「ハイブリッドな働き方」は、これからの時代の理想的なモデルの一つかもしれません。変化の激しい時代だからこそ、一つの働き方に固執せず、常に学び続け、自分自身の価値を高めていく。それが、未来を生き抜くための最も確かな戦略と言えるのではないでしょうか。