- 前回は、ラスタ形式とベクタ形式についてお話ししました。 ラスタ形式とは、各マス(画素)に対して、色を割り当てて表現する画像形式のことで、それに使うソフトウェアを、ペイントソフトウェアと言います。 一方ベクタ形式とは、点の座標を数値化し、数式によって導き出された曲線を使ってなめらかに結んだ画像を表現する形式のことで、それに使うソフトウェアを、ドローソフトウェアと言います。 そして、ラスタ形式とベクタ形式は、用途に合わせて使い分けると良いとお話ししましたね。 さて今回は、動画のデジタル表現について詳しく解説していきますよ。
①デジタル動画の仕組み
- 前回まで、画像に関するデジタル表現について、4回に渡って説明してきました。 今回はそれを応用した動画のデジタル表現についての説明になります。 画像に関するデジタル表現をしっかり理解していないとわからない内容となっていますので、もし忘れてしまった方は、解像度~ラスタ形式とベクタ形式までの動画をしっかりと見直してください。
まず、動画についてですが、こちらはパラパラ漫画をイメージすれば理解しやすいかと思います。 つまらない授業の合間に、パラパラ漫画を教科書の右隅に描いて遊んだ経験があるという方もいるでしょう。 - はい、ぼくも経験者です。
- あとは、アニメ漫画の制作の様子をテレビで見たことがあるという方も多いと思います。 その絵を画像に置き換えたものが動画です。 例えば動画は、画像を細かくつないでできていたりするのです。 動画では物が動いて見えますが、実際には連続した静止画像を高速で切り替えて映し出しています。 連続した静止画像を高速で次々と見せられると、動いているように見えるという人間の視覚の性質を利用しています。
②フレームレート
- 動画を構成している1枚1枚の静止画像のことを「フレーム」と呼びます。 同じ時間の中でなるべく多くのフレームを使うことで、動きがなめらかな動画になることがわかるでしょう。 このように動画1秒間に何枚のフレームを使っているのか、この枚数のことを「フレームレート」と言います。 フレームレートの単位には、fpsが使われます。fpsは「frames per second」の略です。
③動画のデータ容量
- スマートフォンで動画を見すぎて速度制限がかかってしまったという、ぐらみん君のような経験がある方も多いでしょう。動画を見る際には、データ容量を気にする必要があります。
- 毎回微妙な例えのときにぼくを出されるけど・・・事実だから仕方ないよね♪
- 動画のデータ容量を決める要素は3つあります。
まず1つめが、色数です。
色のデジタル表現のIT領域展開で説明した通り、スマホの画面では、帯状となった赤緑青の光具合を調整することで様々な色を表現しています。 例えば、赤緑青の3色を8ビットずつ切り替えて1677万7216色を表現する24ビットフルカラーの場合、1ピクセルあたり8bit×3=24bitの容量が必要となります。 一方で色数を抑え、1ピクセルあたり256色しか使わないようにした場合、2の8乗、つまり8bitしか使わないため、色数だけで1/3の容量で済むこととなります。 しかし、色数を抑えるということは、それだけ使える色数が少なくなるため、色鮮やかな動画にはならないということがおわかりいただけるかと思います。
2つめが、ピクセル数です。
ピクセル数は、画素のIT領域展開で説明したとおり、モニタや画面で使われている画素の数のことです。 例えば、最新のiPhone 14 Pro Maxの場合、2,796px x 1,290pxの計3,606,840画素の構成ですが、2007年に発売された初代iPhoneは480px x 320pxの計153,600画素の構成でした。 画面の大きさは、初代iPhoneからそれほど変わっていないため、画面に使われるピクセル数が多ければ、画像のきめ細やかさが上がる一方で、容量も増えていきます。 先程お伝えした通り、動画も1枚1枚のフレームで構成されているので、そのフレーム1枚の容量が上がれば上がるほど、データ容量も増えていきます。
3つめが、フレームレートです。
フレームレートが大きくなるほど、同じ時間あたりで読み込むフレーム数が多くなるため、データ容量が大きくなります。 例えば、30fpsの場合は1秒あたり30枚のフレームを読み込むのに対し、60fpsだと倍の60枚を読み込むため、倍のデータ容量が必要となります。 なので、フレームレートも大きければ良いというわけではなく、用途に合わせて使い分けるべきなのです。 例を挙げると、防犯カメラや監視カメラの場合、長時間撮影する必要があり、細かな描写よりも犯人の顔や犯行の瞬間を映すことができれば十分なので、3~5fpsのフレームレート設定にしています。 一方で、スポーツ中継で使われるカメラは、選手の細かいプレーの動きや、野球のセーフかアウトのようにコンマ何秒の違いを判定する必要があるため、120~240fpsの高フレームレートの設定にしています。 - なるほどね。
- 人が見てスムーズだと思えるフレームレートは、24fps〜30fps程度と言われています。 みなさんが普段見ているテレビ番組は30fpsだと言われていますので、30fps程度の動画であれば違和感を覚えることは少ないでしょう。 このように、色数、ピクセル数、フレームレートの3つの基準で動画のデータ容量は決まります。 では、先程の例に使った、初代iPhoneと最新iPhoneでどのくらいデータ容量が異なるのかを実際に計算してみましょう。 今回は、10分の動画を視聴するとします。
例1:初代iPhoneで256色カラー、30fpsで動画を見る場合
1ピクセル8bitで、480px x 320pxとなりますから、1フレームあたり8bit x 480 x 320の容量が必要となります。 8bit=1Byteですから、1フレームの容量は1Byte x 480 x 320 = 約150KBとなります。 そして、30fpsということは1秒で30フレーム使うということですから、10分視聴すると、30フレーム x 60秒 x 10分=18,000フレーム必要となります。 つまり、150KB x 18,000フレーム = 約2.6GBとなります。
1ピクセル8bitで、480px x 320pxとなりますから、1フレームあたり8bit x 480 x 320の容量が必要となります。 8bit=1Byteですから、1フレームの容量は1Byte x 480 x 320 = 約150KBとなります。 そして、30fpsということは1秒で30フレーム使うということですから、10分視聴すると、30フレーム x 60秒 x 10分=18,000フレーム必要となります。 つまり、150KB x 18,000フレーム = 約2.6GBとなります。
例2:最新のiPhone14 Pro Maxでフルカラー、60fpsで動画を見る場合
1ピクセル24bitで、2,796px x 1,290pxとなりますから、1フレームあたり3Byte x 2796 x 1290=約10.8MBの容量が必要となります。 そして、60fpsということは1秒で60フレーム使うということですから、10分視聴すると、60フレーム x 60秒 x 10分=36,000フレーム必要となります。 つまり、10.8MB x 36,000フレーム = 約388.8GBとなります。
1ピクセル24bitで、2,796px x 1,290pxとなりますから、1フレームあたり3Byte x 2796 x 1290=約10.8MBの容量が必要となります。 そして、60fpsということは1秒で60フレーム使うということですから、10分視聴すると、60フレーム x 60秒 x 10分=36,000フレーム必要となります。 つまり、10.8MB x 36,000フレーム = 約388.8GBとなります。
- 実際にはこの先の動画に出てくる「圧縮」を使うことで動画の容量はもっと小さくなりますが、圧縮を使わない場合の動画のデータ容量の計算については、ここで原理をおさえて理解しておきましょう。
まとめ
- 動画のデジタル表現は、連続した静止画像を高速で切り替えて映し出すことで実現している。
- 動画を構成している1枚1枚の静止画像のことを「フレーム」と言い、動画1秒間に使われるフレーム枚数のことを「フレームレート」と言う。
- 色数、ピクセル数、フレームレートの3つの基準で動画のデータ容量は決まる。