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【情報Ⅰ#40】産業財産権(特許・実用新案・意匠・商標)とは?覚え方をわかりやすく解説|高校授業_情報1・共通テスト対策【用語解説・授業動画】

  • 前回は知的財産権について解説しました。
    人間の知的活動によって生まれた創造物やアイデア等の財産を知的財産と言い、それを守る権利のことを知的財産権と言います。
    知的財産権は主に産業財産権と著作権に分かれ、その違いとしては、登録の必要性や権利の保護期間があるということもお話しました。
    本日は、知的財産権の1つ、産業財産権について詳しくお伝えいたします。

①産業財産権とは

  • 産業財産権とは、産業や経済に関する新しい発明や独創的なデザイン、固有の商品名などの権利のことを言い、特許権、実用新案権、意匠権、商標権に分けられます。
    これは、前回簡単に説明しましたので、覚えている方も多いでしょう。
  • そうだね!
  • しかし、産業財産権は著作権と異なり、ただ画期的な発明やデザインをした時点で得られるものではなく、登録をしなければなりません。
    例えば、ぐらみん君が、誰でも乗れて行きたいところに行けるドローンタクシーを開発したとしましょう。
    その場合、その発明をした時点ではなく、登録申請をしなければ産業財産権は取得できないということです。
    産業財産権は特許庁という国の機関が審査、管理しているため、発明やデザインをしたら特許庁に登録申請する必要があります。
    この登録申請のことを出願と呼びます。
    出願後、特許庁で既に同じような技術が産業財産権として申請されていないか、書類に不備は無いかなどを審査され、無事に審査を通過すると権利が発生することとなります。
    そして、産業財産権を取得することで、取得した産業財産を独占的に使用することができたり、産業財産を他人に利用させて特許料で利益を得ることができるようになります。

②産業財産権の分類

  • 産業財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つに分類されます。
    1つずつ、例を挙げて説明していきます。
    例えば、Aさんが世界で初めて「鉛筆」というものを開発したとします。
    もちろん、鉛筆自体は既に特許として登録されていますが、ここでは少し時代を遡り、筆で文字を描いている時代にタイムリープしたと思ってください。
    今では鉛筆は当たり前に使っていますが、みなさんも普段の授業で筆しか使えなかった場合を想像してみてください。
    書いたら消せないし、細かい描写は難しいし、すぐ滲むし、墨が服に着いたら落ちないしで、いろいろと大変ですよね?
    先端を削るだけで文字が書ける筆という画期的な発明をした場合は、特許権を登録申請します。
    特許権は、このように高度な技術的思想や、今までにない画期的な発明に関する権利だと理解してください。
  • 確かに、そう思ったら鉛筆って実はすごいかも。
  • 少し余談ですが、私達が普段使っている多くのものも当たり前に使ってしまい、ありがたみを感じていないものが意外と多いのです。
    例えば、洗濯機。昔、洗濯機が無い時代は家族全員の衣服を手洗いするしかありませんでした。
    その洗濯にかける時間はなんと1日8時間だったと言われています。
  • えっ!そんなに!?
  • ですから、昔は子どもから高齢者まで、全員で一緒に生活して家事を分担しなければ、回らなかったのです。
    それが洗濯機が発明されたことで、1時間程度で終わるようになりました。
    さらに洗濯している間は、炊事・掃除といった別な家事をすることができます。
  • 洗濯機ってすごい発明なんだね。
  • はい。その他にも冷蔵庫やエアコン、掃除機や車などが無かった頃を想像してみると、改めてそれらの発明の偉大さを感じると思います。
    発明と言えば、エジソンを思い浮かべる人も多いかと思いますが、そのエジソンも1つの発明のために数え切れない挑戦と失敗を繰り返していたと思います。
    そういった研究者の汗と涙の努力が結実した発明品を守るための権利が産業財産権なのです。
    特許権を得ることにより、他の人が同様の発明をしたとしても、Aさんの許可無しではそれを使用したり販売することはできません。
    しかも、その許可を得るためにはAさんに特許料として一定の金銭を支払うなどの義務が発生します。
    ここで重要なのは、産業財産権は一番最初に出願をした者勝ちということです。
    例えば、Aさんよりも、Bさんの方が鉛筆を早く発明していたとします。
    しかしBさんは鉛筆の特許を出願しないまま時が過ぎ、Aさんがその間に、鉛筆の特許を先に出願した場合、特許権を得るのはAさんなので、BさんはAさんの許可無しで鉛筆を使用したり、生産・販売することはできないのです。
    この一番早く出願した者が、その権利を取得することを先願主義と言います。
  • 僕も朝は洗顔主義だよ。
  • また、最近生まれた特許権として、ビジネスモデル特許というのができました。
    これまでの特許といえば掃除ロボットのような家電製品から、カップ麺のような食品まで、誰もが知っている大ヒット商品の多くが特許を取得しています。
    特許法は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されていて、特許を取得したものには全て実体があり、その実体の発明によって特許を取得することができました。
    しかし、インターネットの目覚ましい普及により、実体を持たないモノに対しても、発明や使用に関する保護の必要性が高まってきました。
    そこで、このビジネスモデル特許が生まれたというわけです。
    例えば、Amazonで商品を注文する時に、購入者情報を登録しておけば、注文のたびに住所や決済方法を入力しなくても、ワンクリックで商品購入手続きが完了するシステムです。
    このようなコンピュータやインターネットを活用して、新しいビジネスモデルを実現した特許をビジネスモデル特許と言います。
    次に、この商品を鉛筆と名付けます。
    世の中に鉛筆という名前の商品はまだ存在しないため、「鉛筆」という名称を、この場合は商標権で登録申請します。
    商標とは、自分が取り扱う商品やサービスと、他人が取り扱う商品やサービスとを区別するためのマークのことを言います。
    つまり、商品名だけでなく、商品のロゴや記号なども含めて商標ということになります。
    この商標権を得ることで、他の人は「鉛筆」という商品名で販売することはできなくなります。
    有名な商標としては、マヨネーズの「キユーピー」や殺虫剤の「キンチョール」、カップ麺の「どん兵衛」などがあります。
    この商標権を取ることで、CMなどで堂々と商品名を言ったり、ロゴを看板にして宣伝ができるわけです。
    また、特許権、実用新案権、意匠権は一定期間の独占使用の後、その後は誰もが自由に利用できるようになりますが、商標権だけは異なり、保護期間の終了後も更新手続きを経ることによって権利を存続させることが出来ます。
    これは、商標法の目的が他の3つの権利とは異なり「事業者の信用維持や消費者の混同を回避する」という目的があるからです。
  • ん?どういうこと?
  • 商標権の更新ができなくなった場合、キューピーという名前で販売できるのも10年間のみとなります。
    そうすると、パッケージや看板でキューピーという文字やロゴを使っているところを全て変えなければいけませんよね?
    また、10年経過した後、別なマヨネーズ会社がこぞってキューピーの商標を取ろうとします。誰もが知っているキューピーという名前で売れば売れそうですからね。
    そのマヨネーズ会社がくそまずい粗悪品のマヨネーズを作る会社だったとしたら、消費者にとっても「今のキューピーのマヨは違うキューピーだ」などと混乱を招きますよね。
    ですから、商標権だけは、更新できるようにして、事業者の信用維持や消費者の混同を回避するようにしています。
    次に、この鉛筆の形状や色などのデザインを意匠権として登録します。
    例えば、自動車の場合、今では様々なメーカーから、いろいろな種類の自動車が販売されています。
    そういったときに新しく作った自動車のデザインを他社に真似されないように登録するのが、意匠権となります。
    また、いつも斬新なデザインで流行を先走るアップルのApplePencilやAirPodsなども意匠権として登録されています。
    最後は実用新案権です。
    やがて鉛筆が一般的に使われるようになってきたとき、もっと便利に使えないかという意見が出始めたとします。
    丸いと机に置いたときに転がって落ちやすくなるから、六角形の形にしよう。さらに間違えても消せるように、もう一方の端に消しゴムを付けよう。といった付加的なアイデアです。
    このように鉛筆ほどの画期的な発明ではないものの、構造や形、組み合わせなどの考案による小発明を保護するのが実用新案権となります。
    特許権、実用新案権、意匠権、商標権の4つについて、違いを理解してもらえればと思います。

③産業財産権の調べ方

  • 皆さんが特許権や商標権を取りたい場合に、既に類似するものがないかを調べることができます。
    Googleなどで「特許情報プラットフォーム」と検索してみてください。
    そこで、登録されている産業財産権について調べることができます。
    実は、なかのりPGも「答えを教えず、日本一失敗させるNozomiプログラミング&Webスクール」という商標登録を行っています。
    簡易検索で「商標」を選択し、キーワードで「答えを教えず」で検索すればヒットしますので、やってみてください。
    なかのりPGは子どもたちの思考力が問われる今日において、答えを教えない、失敗させるという教育は今後ブームになると思い、このフレーズを真似されないよう商標登録しているのです。
    あとは、「意匠」を選択し、キーワードで「アップル イヤホン」で検索すればAirPodsが出てきますし、他にも興味のある分野や企業で検索してみると良いでしょう。
    先程もお伝えしましたが、日本では先願主義で、先に発明した人よりも先に出願した人の方に権利が与えられます。
    皆さんも何か画期的な発明をした際には、必ず産業財産権を出願するようにしましょう。

まとめ

  1. 産業や経済に関する新しい発明や独創的なデザイン、固有の商品名などの権利を産業財産権と言う。
  2. 産業財産権は、特許権、実用新案権、意匠権、商標権に分類される。
  3. 産業財産権は、一番最初に発明した人ではなく、一番最初に出願した人に権利が与えられる。これを先願主義と言う。
  4. コンピュータやインターネットを活用して、新しいビジネスモデルを実現した特許をビジネスモデル特許と言う。