忘れ物をすること、また遅刻する子も問題ですが、私がそれよりも更に問題だと感じているのが、保護者の皆さん、つまり親が子供が遅刻したり忘れ物をしないようにと、過保護になってしまっていることなんです。この考え方はわかると思いますが、そうなってしまうと、子供が失敗する機会がなくなるんです。
子供はどこで失敗するかというと、大人になって社会人になってから失敗するんです。遅刻したり、忘れ物をしたりという基本的な失敗を社会に出てから初めて経験するんですね。つまり、親から離れて社会に出てから初めて失敗に気づくんですよ。そこでは言われないかもしれないことを言いますが、こういった子供は社会人になった時、時間を守れない、忘れ物をする、といった超基本的なこともできない人として評価される可能性があると思います。
皆さんもご存知の通り、大人になるとなかなか言ってくれなくなるものです。しかし、社会に出るということは、お金をもらう立場になるわけで、その時点で遅刻をする、忘れ物をする、ということがいかに問題であるかということに気づいてほしいと思います。
特に最近は、上司がその子のためを思って注意すると、「パワハラだ」とSNSに投稿されたりして、上司は何も言えない状況になっています。しかし、会社にとってそういう人は一番面倒くさいんですよ。これは何となく理解いただけるでしょう。つまり、幼稚園生でもできることが当たり前にできないということになると、問題となるわけです。だから、そういった意味でも、誰も何も注意してくれずに評価がどんどん下がってしまい、本人が気づいたときにはリストラされてしまう、ということもあり得ます。それでも「私は一生懸命仕事しているじゃないか」と思うかもしれませんが、そのような点が評価されてしまう可能性があるのです。
さらにもう一つ言うと、Nozomiに通っている子供たちの中で、成長が目覚ましい子供たちや自分で考えられる子供たちは、大体親に頼らずに自分で準備をしてきています。また、車での送り迎えではなく、電車やバス、自転車を使って自分で通学しようとするところが、成長する子供たちの特徴だと感じています。
「車で送迎してはいけない」という意味ではありません。その点を誤解しないでいただきたいのですが、車で通学するということは親が時間通りに車に乗せてしまうため、渋滞がなければ遅刻はしないということになります。
たとえ渋滞で遅れてしまったとしても、私はその子を責めることができません。何故なら、その子が悪いわけではないからです。なので、私から見ると、そのような状況でも子供を失敗させるということが本当に重要だと感じています。
さらに、毎回お母さんが「今日はNozomiだよ、テキスト持った?ボールペン持った?」と言わないでほしいんです。あえて言わないで、子供に失敗させてほしいんです。そうすれば、私がちゃんと指導しますから。私は理由を聞いてから、頭ごなしに注意することはしません。忘れた理由を聞き、忘れ物をするということがどういうことなのかを説明し、それを子供の成長に繋げます。だからこそ、私は子供たちを失敗させてほしいと思っています。
要するに、遅刻して失敗する、忘れ物をして失敗するということは、それ自体が子供にとっての成長の機会なのです。親がそれを事前に防いでしまうと、子供の成長の機会を奪ってしまうことになるのです。
最近の東大の研究でも言及されましたが、現代においては失敗させることが貴重な財産となっています。子供は失敗を通じて成長する生き物なのです。しかし、現代では大抵の失敗が防がれてしまう状況にあります。動画などで正解を教えてくれるため、子供たちはあまり失敗しないのです。
これは昔と比べて明らかに変わったことです。だからこそ、失敗させることは本当に貴重な経験となります。その経験を妨げる行為が、いかにもったいないかということに、皆さんに気づいてほしいと思います。