ホワイトカラーは消える?AI時代を生き抜くための選択

崩壊する「大学→就職」

「人生100年時代」と言われる現代、私たちの子どもたちは、これまでの常識が通用しない、変化の激しい時代を生きていくことになります。医学の進歩や健康知識の普及により平均寿命は伸び続けますが、同時に少子高齢化も加速し、子どもたちの世代はより厳しい社会を生き抜かなければなりません。

先日、息子の高校入試説明会に参加した際、ある学年主任の先生が「私の教え子に、英語科に進んだ後、高卒で就職活動をしたが、なかなか仕事が見つからなかった生徒がいます。今は大学卒業が一般化しているので、大学に行かないと就職は難しいですよ」と話していました。これは、大学進学を勧めるための話でしたが、私は強い違和感を覚えました。なぜなら、その話はあくまで「過去の価値観」に基づいたものだからです。「いい大学に入り、いい会社に就職する」という、かつての勝ちパターンは、もはや通用しなくなりつつあるのです。

AIが大きく変える仕事の価値観

今、社会はAIの進化によって劇的に変化しています。特に、これまで安定とされてきた「ホワイトカラー(ワイシャツを着て働く事務職や専門職)」の仕事が、AIに代替され始めています。例えば、翻訳業務は高精度なAIツールに、事務作業は自動化システムに置き換えられつつあります。

この変化を象徴する現象が、アメリカで起きています。2025年11月2日の日本経済新聞では、「ブルーカラー・ビリオネアの時代」という記事が掲載されました。これは、これまで所得が多くないとされてきた「ブルーカラー(作業着などを着て現場で働く技術職)」の中に、億万長者が増えているという内容です。AIには代替が難しい、冷暖房の修理や水道管工事といった専門性の高い現場作業の価値が急上昇し、弁護士のような高単価とされたホワイトカラーの仕事がAIによって低コスト化しているというのです。これは、仕事における価値の「逆転現象」と言えるでしょう。

AI時代を生き抜くための2つの道

では、このような時代に、子どもたちはどのような力を身につけるべきなのでしょうか。私は、大きく分けて二つの道があると考えています。

一つは、「専門的な技能を身につけ、ブルーカラーとして活躍する道」です。大工や電気工事士、あるいはアメリカで高給な仕事として注目されているエレベーターの修理工など、AIには真似できない高度な技術を持つ人材は、今後さらに重宝されるでしょう。

もう一つは、「生成AIを完全に使いこなし、ホワイトカラーとして生き残る道」です。AIによって仕事が奪われるのであれば、そのAIを誰よりも巧みに活用できる人材になればいいのです。これからのホワイトカラーには、AIに指示を出し、AIと協働して新たな価値を生み出す能力が不可欠になります。中途半端な知識やスキルでは、月々数千円のAIツールに取って代わられてしまうでしょう。

親である私たちも、過去の成功体験に固執してはいけません。常に新しい情報を学び、未来を見据えて、子どもたちが本当に活躍できる道は何かを一緒に考える必要があります。どの道を選ぶにせよ、確かな「専門性」を身につけることこそが、これからの時代を生き抜くための鍵となるのです。